結工房 ライフ vol.4

written by Keiko Koma

月に一度、いだきしん先生がコーヒーを焙煎する為に、結工房にお越しになります。雨が降る五月の日、大きな車が結工房に止まりました。結工房に生きる生き物は勢ぞろいで並んで、いだきしん先生と女王様をお迎えします。女王様は、いだきしん先生が焙煎して下さったコーヒーを私たちに淹れて下さいます。その時、コーヒーの声までも教えてくれます。生き物と話ができる女王様のお話を聞くことが私たちの楽しみです。

コーヒーを飲みながら、いろいろなお話をしている時、まだ何者かわからない種に対して女王さまは、正体は何?と問われました。不意をつかれたものが、実は六本木の狸と同じ首輪をしていると明かしました。女王様は、「そうね。狸ね」と頷きました。他の生き物は「自分は猿です」と言いました。女王さまは、「そうね」と頷きました。最後の生き物だけはわからないと言いました。いつも寝ているように感じる生き物です。本当は何なのか、と皆で考えても正体が分かりません。自分が何者かがわからないと他の生き物の真似をしたり、周りに合わせたりでますますわからなくなります。

 

女王さまが、コーヒーを淹れていると、コーヒーが喜び、溢れ出る勢いでした。すると、何者かわからない生き物が、「ほー」と鳴きました。泣いてもいました。その声は真の声でした。女王さまは真の声は聞こえる方です。鳥では…と感じ、鳥の名前を辿りました。

アホウ…アホウドリ、との名前がピッタリと考えたようです。アホウドリのことを調べると、間違いないとわかりました。アホなのでアホウドリと名付けられたと書いてあります。また人間にとられやすく、餌は天から降ってくると思っていると書いてありました。確定しました。

アホウドリは大喜びで涙を流していました。やっと正体を見つけてもらえ、自分が何者かをわかり、安心したのです。いつも何者かがわからずに、人の真似をしたり、人と同じように振る舞い、失敗したりします。怒られても何で怒られているかもわからずにポカンとしているので、また怒られます。それでも結工房での暮らしが楽しくて、毎日いるのです。ここから離れることは考えられません。ここは食べものが美味しくて、皆が笑顔で暮らしています。美味しいものを食べる時は、皆で喜び、ただ楽しいのです。今日も楽しく皆で熊が作ってくれたカレーを頂きました。世界中のあらゆる生き物が暮らせる場です。ここにいると、自分の正体が分かります。何者かがわかると、安心して暮らしていけます。そして皆と仲良く生きていけます。ありがとうございます。